たまらなかった。

ただ原作を読んだ作品がどのように映画になるのかを観たかったので、しかも、大体の映画は原作を超えることはないと聞かされていたので、日経新聞の映画評欄の評価が☆4つだったという若干の期待感だけを持っていた。

観に行くことになって、前半部分だけ原作を読み返していったので、所々にそれと符合する台詞や情景が出てくると胸が高鳴ったが、単に「原作を読んだから」という種類の高鳴りでは終わらなかった。当然、ロケ地が仙台だと言うこともあるが、それだけでもない。

配役もまた絶妙だった。僕が監督だったとしても、これ以上のキャスティングはできないだろう(もっとも素人なので当たり前だけれど)。良かったのは泉水(加瀬亮)と春(岡田将生)の兄弟とその父(小日向文世)、そしてもう一人の父(渡部篤郎)。本当にいい味を出していた。

原作にあったシーンは、それが想像力ではなく、視覚と聴覚を通して直に入ってくることで新たな感動を起こしてくれたし、原作になかった(と思われる)シーンも決して原作のイメージを壊すことなく、自然な『重力ピエロ』の一部分になっていた。

この映画は見ておいて損した気分はまったくなかった。多少、伊坂ワールド的なスタイリッシュな台詞はあるが、それでも何か大切なものを心に落としてくれる一作だった。重力に負けずにピエロがふわっと浮かぶような悲しさと温かさを含んだ感覚が鋭く突き刺さった。ここ数年で劇場に見に行った中では最高の一作だ。

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