先に映画を見てしまったのだが、伊坂幸太郎の作品の中でも評判が良いようだったので、あえて読んでみた一作。

映画を見て以来、これがどんな小説になっているのだろうと気にはなっていたが、椎名〔現在〕と琴美〔二年前〕の二人の語り手が交互に話を紡いでいく形で、謎が次第に明らかにされるという展開だった。実際、映画を見てしまっていただけに、最初に読み始めた時から、物語に秘められている謎は全て知っていたので、読んでいてその急転直下的な種明かしに驚くことはなかった。でも、きっとこういう推理小説的な(実際は推理小説ではないと思うが)、小説を二回読むとこんな感じなんだろうなといった感覚は味わうことが出来た。

話のあらすじは知ってはいたが、小説の詳細な部分には大いに興味が持てた。なんといっても『アヒルと鴨…』は仙台が舞台なのだ。「椎名の住んでる場所がどこで、ペットショップはどのあたりにあり、本屋はこんなところ」といった小説の舞台に関することは、自分の生活圏だった場所と重なっているだけに想像が膨らんだ。そして、椎名の通っている大学。これはきっと伊坂さんと同じ法学部という設定だけに、僕の過ごした場所でもあるのだろう。とても読んでいて嬉しかった。

まあ、もっともそんな仙台大好きな僕のような人でなくても、十分楽しめる小説だとは思う。会話や地の文でのやりとりや、人物のユニークさなど、娯楽的な要素も備えているし、一種の青春小説としても読めるだろう。多少癖があるだけに伊坂幸太郎の叙述形態が合わない人もいるだろうが、大体の人には読んで損をしたと後悔させない作品だと思う。

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