多少息を切らして、電車に飛び乗った。今日はたまたま駅につくのが遅れて、プラットホームへ続く階段を一息に駆け上がってきたところだった。無事に予定の電車に乗れた安堵感と、わずかな努力が実った達成感で人心地ついていると、突然電車が揺れた。「まだ発車していないのに」と思い、顔を上げてみるとホスト系のお兄さんがドアにべったり張り付いているではないか。しかも必死な形相をして、まったく離れる意思はなさそうな勢い。「おお、スパイダーマン!!」と思いながら四肢を伸ばして張り付く彼をじっと見つめていたが、さすがに完全にドアが閉まった後のこと、彼の執念は叶わないかに思えた。しかし、張り付いたままのスパイダーマン。意地でも離れないつもりらしい。すると、10秒もした頃だろうか。ついに車掌さんに彼の願いが通じたのか、ドアが開いた。「さすがスパイダーマン!!」とここまで来ると呆れより賞賛が自分の中では勝ってしまった。そして悪びれもせず当然のことのように車内に入り、座席に腰を下ろすヒーロー。さすがに自分ではここまでできないなと思った。
そして30分ほどして僕は目的地の駅で降りたわけだが、スパイダーマンはその時座席で爆睡していた。さすがヒーロー。余裕がある。しかし僕は思った。「ここ終点なんですけど」と。
そして30分ほどして僕は目的地の駅で降りたわけだが、スパイダーマンはその時座席で爆睡していた。さすがヒーロー。余裕がある。しかし僕は思った。「ここ終点なんですけど」と。
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