行きずりの街 (新潮文庫)
2008年3月12日 読書
ISBN:4101345112 文庫 志水 辰夫 新潮社 1994/01 ¥580
「’91 このミステリーがすごい第一位」という帯を掲げて、地元の本屋で大々的にフィーチャーされていたので、ミステリーってどんなものだろうと思って読んでみた作品。結論から言うと、帯にやられたなといった感じがする。
まず、話の本筋である教え子を探すというところの動機がいまいちしっくり来なかった。いずれ驚くような理由が入るのだろうと期待していたが、何もないまま終わってしまい、結局何のために死を賭してまで主人公が駆け回ったのかという疑問が消化不良のまま残ってしまった。そして、街の情景描写が自分にはくどすぎたし、しかもその情景を思い描くことが出来なかった。場面が変わるごとに、また主人公が移動するたびに街の様子が描かれているのだが、そこまで説明されても本筋と大きな係わり合いがあるとも思えなかったし、東京に不慣れな人にとっては想像力の範囲外といった感じなのではないか。もっともこれに関しては自分の想像力にも問題はあった。さらに、ここが一番の疑問点なのだが、この作品は本当にミステリーなのだろうかという思いが最後まで抜けなかった。隠された謎を解明していくというよりは、与えられた事実に従って主人公を行き当たりばったりと動かしているというような展開が繰り返されている気がして、ミステリーというよりはハードボイルド小説といった方が正しい感じもした。
たぶんこの小説は帯のつけ方を間違っていた気がする。「このミス一位」のうたい文句だけで踊った人は、おそらく失望を覚えたに違いない。きっとこの作者から離れてしまうだろう。読後にレビューを参照したところによると、この作者の本領は別の作品でこそ発揮されているらしい。人物描写や心情の機微、スピード感などは、この作品でも読ませてくれるところはあったので、かなり書ける人ではあるのだろうと思う。ただこの作品をミステリーと呼んでいいのかどうかは、賞を与えた側をも疑問に感じさせるところがあった。
「’91 このミステリーがすごい第一位」という帯を掲げて、地元の本屋で大々的にフィーチャーされていたので、ミステリーってどんなものだろうと思って読んでみた作品。結論から言うと、帯にやられたなといった感じがする。
まず、話の本筋である教え子を探すというところの動機がいまいちしっくり来なかった。いずれ驚くような理由が入るのだろうと期待していたが、何もないまま終わってしまい、結局何のために死を賭してまで主人公が駆け回ったのかという疑問が消化不良のまま残ってしまった。そして、街の情景描写が自分にはくどすぎたし、しかもその情景を思い描くことが出来なかった。場面が変わるごとに、また主人公が移動するたびに街の様子が描かれているのだが、そこまで説明されても本筋と大きな係わり合いがあるとも思えなかったし、東京に不慣れな人にとっては想像力の範囲外といった感じなのではないか。もっともこれに関しては自分の想像力にも問題はあった。さらに、ここが一番の疑問点なのだが、この作品は本当にミステリーなのだろうかという思いが最後まで抜けなかった。隠された謎を解明していくというよりは、与えられた事実に従って主人公を行き当たりばったりと動かしているというような展開が繰り返されている気がして、ミステリーというよりはハードボイルド小説といった方が正しい感じもした。
たぶんこの小説は帯のつけ方を間違っていた気がする。「このミス一位」のうたい文句だけで踊った人は、おそらく失望を覚えたに違いない。きっとこの作者から離れてしまうだろう。読後にレビューを参照したところによると、この作者の本領は別の作品でこそ発揮されているらしい。人物描写や心情の機微、スピード感などは、この作品でも読ませてくれるところはあったので、かなり書ける人ではあるのだろうと思う。ただこの作品をミステリーと呼んでいいのかどうかは、賞を与えた側をも疑問に感じさせるところがあった。
コメント