ISBN:4101250227 文庫 伊坂 幸太郎 新潮社 2005/04 ¥660

 5つの話が、同時進行的に進んでいく群像劇。一言で言えばそういった趣の作品なのだが、単に5つの話が絡まるのではなく、最後までどのように話が関わっているのかがはっきりせず、話と話の関係性に時間トリックとでもいった化粧が施されている。連続して5つ(一章あたりで毎回出てくるのは4つ)の話を何回も読まされるため、その連続性に慣れが生じてしまい、後半で明かされてくる互いの話の関係性を捉えられたようで捉えきれないといった不思議さがこの小説を読む面白さにつながっていると思った。その話の関係性を除いて一つ一つの話を考えると、人物描写の面白さや他の伊坂作品とリンクをしているところなどは、この作者を好んで読んでいる人には多くの楽しみを与えてくれるだろう。ただ、ミステリーを読みたいと思って手に取った人にとっては、その欲求を十分に満たしてくれるかどうかは疑問。ミステリーだとか純文学だとかといったカテゴリー分けをしてこの作品を読んだとしても、スッキリしないものが残るだけだと思う。

 なんとなく伊坂さんの作品は非常に面白いとか気になって仕方がないとかいう分類のものではないけれど、なにか惹かれるものがある。中毒的なものだろうか。次は『陽気なギャングが地球を回す』を読もうと考えているのだが、ここで問題が発生した。弟が今まさにその『陽気なギャング〜』のDVDを借りてきてしまっている。これを観るべきかどうかの葛藤が自分の中で発生している。

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