ISBN:4062757249 文庫 伊坂 幸太郎 講談社 2007/05/15 ¥620

 伊坂さんの小説は仙台を舞台に描かれることが多いらしい。舞台でなくとも何らかの形で仙台が関わってくるとのことだ。仙台は僕が大学時代を過ごした街ということもあって、小説を読んでいて描写が出てくると懐かしさが胸にこみあげてくる。そして描かれている風景がどういう場所であるか思いを巡らす。よって、伊坂さんは僕にとって郷愁を誘う作家さんということになる。

 今回の作品は短編集というよりは一人の人物にスポットを当てた連作短編といった感じだった。全部で五つの短編で構成されており、語り部も異なっている。どれもが読み終えてみると、謎が氷解したり心が和んだりする結末になっており、この前読んだ『グラスホッパー』よりも個人的には好きだった。今作を読むまでは、伊坂さんはなんとなく冷たい印象を与える文章を書く人なのかと思っていたが、面白みのある文章も書くんだなと考えを改めさせられた。作家の顔はやはり一つだけではないらしい。隠し持った武器をたくさん備えてこそ、幅の広い文章が書けるのだろう。

 

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