ISBN:4101001472 文庫 安西 水丸 新潮社 1999/07 ¥620

 個人的に僕は、作家さんの個性はエッセイでこそ発揮されると思っている。小説や論説には出てこない話題や嗜好、言い回しなどが表れてきて、その他の種類の作品を読んでは分からないような意外な一面が感じられて面白い。今まで村上春樹さんの小説はそれなりに読んできたが、その既成イメージと重なる部分もあり、新たな発見もありといろいろな収穫があったような気がする。

 書いている内容自体は、時に個性的な洞察が成されてはいるが、それほど驚くことではないし、極めて面白いものでもないかもしれない。ただしエッセイを読むというのは、というか読もうとする時点で、その作家さんに興味を抱いているということだろうと思う。そういう人にとっては、この本で村上春樹という作家に触れることができるだけで、十分目的を達成しているのではないかと思う。独特の言い回し(僕は「〜〜だろうけれど」というのが気になった)もあり、個人的な趣味の披露もありと、村上春樹さんがどういう人なのかを感じることが出来て、個人的には満足した。

 ただ、氏の書いた小説についてのあとがき的なものや、作家論など、論説的エッセイを求める人にとっては、多少物足りないかもしれない。『週刊朝日』に連載されたコラム的を本にまとめて出版している都合上、個人的な考察やイデオロギー的なものは意図的に排除している観があるので、そのあたりは残念といえばそうだけれど、別のものに求めるしかないと思う。僕としては、些細なエピソードから漏れ出てくる村上さんの人柄がとても興味深かった。

 

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